大正のヒッピー
3月21日(月)15時07分13秒
北斗が「大空」を載せた『緑光土』(大正14年)の作者、大空詩人こと、永井叔(よし)について調べています
自叙伝を入手して、読んでいます。
永井は松山の医者の息子で松山中学、同志社を出た教養人ですが、天衣無縫というか奔放な人ですね。上官を殴って軍隊を辞め、マンドリンを挽きながら全国を放浪した「吟遊詩人」です。北斗より10ぐらい年上ですね。
托鉢で旅費と出版費用を稼いでいたそうです。
大正時代のヒッピー、とでもいうべきでしょうか。50年早かったですね。
戦前より街頭詩人として有名(というか、名物)な人だったらしいです。中也に影響をあたえ、恋人、長谷川泰子を紹介したのが彼だそうです。
「大空」を崇拝する独自の哲学というか宗教観のようなものを持っていたようで、大空を称える詩を数多く作りました。
北斗との関わりですが、95年版『コタン』では掲載の経緯が不明となっています。
しかし、大正14年、永井は東京にいましたから、北斗が街頭でマンドリンを弾く永井に接触したのだと思います。
「名物」の街頭詩人永井は様々な文化人と交流があったようですが、一部を除いてあまり深い交わりではなかったようですね。
永井の著作の中では「長谷川泰子」は「清水谷八枝子」となっているのですが、これはどういうことでしょうか。芸名でしょうか。
長谷川泰子の自伝「ゆきてかへらぬ」も参照してみたいと思っています。
『緑光土』も確認しなければと思い、昨日大阪府立中之島図書館に行ったら、なんだか年度末の休館で閉まっていて、無駄足でした。ショック。
3月27日(日)00時20分43秒
北斗の「大空」が掲載されている『緑光土』を図書館で見てきました。
『緑光土』は奥付によれば大正14年8月16日発行。
表紙には英語で「EVER GREEN ZION」、「OHZORA」、裏表紙にエスペラント?で「TERNE VERDA ZIONO」「Y.NAGAI」「獄中作」「GRANDA CIERO SHA」などといろいろ書いてあります。
著者 永井叔、印刷人 小林繁次郎(東京市麻布区六本木町廿一番地)、印刷所 小林印刷所(所在地同じ)、発行所 オホゾラ社出版部(所在地同じ)。定価一円八十銭。
作者の永井叔に似て、変な本です。
出版資金は街頭でマンドリンやバイオリンを弾きながら、托鉢で稼いだのだということです。
目次がなく、またページノンブルも最初から最後まで連なっていません。詩編「緑光土」の上編と下編でそれぞれページ数が1から振られています。
『緑光土』はメインが永井叔が獄中(軍隊で上官を殴ったため)で書いた長編詩(叙事詩)ですが、他にも数人の作品(歌・画)が載っています。
永井の叙事詩のあとに、北斗の「大空」が載っており、その次のページに数人の寄稿者の名前とともに、「緑光土のために作品を御贈り下さつたすべての方方に心から謝意を表します。」というコメントがあります。いずれも永井の大空賛歌に賛同しているような作品ばかりなので(北斗も含め)、賛同者や援助者からも寄稿を募ったのかもしれませんね。
緑光土とは、永井の思い描く楽土というか仙界というかエリシオンというか・・・キリスト教的というのではなく、ギリシア神話っぽい楽園を描いたものでしょうか。どことなく新興宗教の合成神話のようですが、宮沢賢治的な感じもしないでもないです。95年コタンの解題では山田先生は「何とも形容しがたい永井の『詞曲』」いう表現をされていますが、まあ、そうでもないかとも思います。
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