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2006年1月23日 (月)

小熊秀雄と吉田一穂


 小熊秀雄詩集と吉田一穂詩集を読む。

 二人とも北斗と同世代で、小熊は小樽生まれ(樺太育ち)、吉田は古平の生まれ。二人とも、少年時代にニシン漁を経験しています。
 といっても、対称的で、小熊は継母に虐められる不遇な少年時代を過ごしており、生活のために鰊場をはじめとして、伐採、炭焼、昆布漁などの労働をしているのに対し、吉田は網元の息子で「引きこもり」、どちらかというと放蕩息子ですね。

 小熊秀雄はそのような貧困の中から、旭川で新聞記者となり、上京して芸術家・詩人として名を成します。小熊は和人ですが、どことなく、北斗の「もしかしたら、あったかもしれない未来」を思わせます。北海道に戻らず、東京にずっといたら、北斗にも歌人・詩人としての将来があったのかもしれません。

 小熊には「飛ぶ橇」という詩があります。老アイヌと和人の山林官の交流を描いたものですが、雪崩から山林官を救うアイヌの勇敢な姿には心を打たれます。
 
 一方の吉田一穂もまた、東京で詩人として成功しますが、故郷古平を「白鳥古丹(かむいこたん)」と呼んで憧憬しています。
 その古平のコタンは、北斗が

ウタリーの絶えて久しくふるびらのコタンの遺蹟に心ひかれる

 と詠ったコタンと同じ、古平のコタンなのでしょう。

 もちろん、和人である吉田が偲んだ「コタン」と、アイヌである北斗の「コタン」はその切実さにおいて、まったく意味合いが違うでしょう。しかし、和人である吉田もまた、自らの原風景を「コタン」という言葉に託したのは興味深いことだと思います。

管理人  ++.. 2006/01/23(月) 01:27 [104]


 その吉田一穂に「白鳥」という詩があります。


   白鳥

 1

 掌(て)に消える北斗の印。
 ……然れども開かねばならない、この内部の花は。
 背後(うしろ)で漏沙(すなどけい)が零れる。

 (後略)

 というのがあります。


 この「北斗」はもちろん違星北斗の北斗ではないでしょうが……なんだか気になります。

 

管理人  ++.. 2006/01/23(月) 01:35 [105] [引用]

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