希望社の雑誌
北斗が生きていた時代の希望社の雑誌がごっそり売りに出ていたので、意を決して購入。
全部93冊だけど、一冊あたりだと100円ちょっと。
①「のぞみ」 希望社
大正12年 1~11月/大正13年1月、3~12月/大正15年2~7月、9月、11月
昭和2年1月、5~8月/昭和3年1~12月/昭和4年1~7月、9月、11月
②「希望」 希望社
大正11年6~7月/大正12年6~11月/大正13年1~5月
大正14年1~4月、8~12月/大正15年2~11月/昭和2年4~5月、7月、9~10月
昭和3年1~7月
以前、同じく希望社の「大道」に北斗の追悼記事があったので、期待に胸を躍らせながらとりかかりました。
数日かけて、ひととおり精読しましたが、北斗に関することは全くでていませんでした。
非常に、残念です。
「のぞみ」、「希望」とも修養雑誌ですが、それぞれのターゲットが「のぞみ」は一般読者、「希望」は教育者向けということのようです。
執筆はほとんど後藤静香一人によるものらしく、格言や古今東西の偉人伝、寓話などが主です。カリスマ的な後藤静香の一人語りです。
希望社の雑誌には、同じく北斗が愛読していた、西川光二郎・文子夫妻の「自働道話」「子供の道話」のように、読者からのお便りを掲載するといった「双方向性」がほとんどみられません。
そういうこともあってでしょうが、北斗の痕跡は、今回読んだ「希望」「のぞみ」にはまったく残っていませんでした。北斗は後藤静香とは面識があり、アイヌのことでいろいろ意見交換をしたりしていたようですが、雑誌上においては、北斗は百万読者の一人でしかなかったようです。
(ただ、「大道」が北斗の追悼文を掲載した昭和5年のあたりには、同様の何かがあるかもしれませんし、今回チェックしていないところに掲載されている可能性はないとはいえませんが)。
同じ修養雑誌でも、「読者参加型」でアットホームな雑誌であった西川光二郎の「自働道話」等と、カリスマ後藤静香のお言葉、いわば「お筆先」を記した希望社の「希望」「のぞみ」等とは、当然ながら棲み分けがあったと思います。
ただ、共通しているのは、時系列で読んでいくにしたがって、徐々に右傾化していく時代の匂いや勢いが、誌面からもよくわかることでしょうか。
時代の空気が、そうだった以上、その空気を吸っている北斗をはじめとする善男善女、無辜の人々もまた、その影響を受けざるを得ないのだと思います。
北斗の右傾化したようにみえる言動について、現代の匂いや色のついた空気の中から、あれやこれや非難するのは簡単ですが、それでは本当の北斗のこと、彼の言葉の意味は何もわからないでしょう。
北斗が吸っていた空気の色や匂いを知らなくてはいけない。完全とはいえないけれども、その空気を出来る限り知ったつもりになった上で、北斗の言動を見なければならない。
そんな気がします。
機会があれば、希望社の雑誌について、もっと読み込んで、何か書いてみたいとも思います。
コメント